球形の地球を平面図に表す投影法:UTM(Universal Transverse Mercator)ユニバーサル横メルカトル図法を決められたルールで緯度・経度方向にグリッド線を引いて縦軸・横軸の交点の座標で地球上の位置を特定することができます。

 緯度・経度は地球上のどの場所でも特定することができますが緯経度は60進法を用いて度・分・秒で表したり、時には10進法で度だけで表したりするなど混乱を招いたり、数字の桁数が多く誤った伝達が行われる可能性があり山岳遭難や自然災害時に無線や電話あるいは口頭でコミュニケーションするのには適していません。

それに対しUTMグリッドは100Km以上の桁の数字を運用時に省略し100Km未満の数字だけでコミュニケーションをするため、わずか6桁(100m単位)の数字だけで位置(場所)の特定ができるのです。(省略する100Km以上の数字は地図上に小さな文字で記載されていますが通常は使いません)そのため災害対策・遭難対策において無線・電話等でも迅速かつ正確に位置(場所)の伝達・特定が可能となります。

また、グリッド線の間隔は東西・南北に等距離(中縮尺では1Km間隔)であるため、縮尺を意識せず地点間の距離を直観的に把握することができます。

UTMグリッドは世界標準ですので海外の登山地図などアウトドア地図に採用されています。また地図情報システム(GIS)やGPS機器でも緯経度と同様にUTMグリッドをサポートしているシステム・機器が数多くあります。 
内閣官房国土強靭化推進室が毎年発行する「国土強靭化年次計画」の中でも「関係省庁の災害対応業務、関係機関における情報共有・利活用、UTM グリッド地図の活用等について、標準化を推進する。・・・」と災害時のUTMグリッド活用を推奨しています。

そしてMGRS(Military Grid Reference System)はUTMグリッドをベースとして陸上戦闘時に紙地図・無線等で位置を正確・迅速に伝達しやすくするためにアメリカ陸軍により開発されたもので、アルファベット2文字で表す100Km四方のMGRSゾーンの採用によりエリアの特定よりしやすいと言えます。UTMグリッドの100Km以上を省略した数値がMGRSと同じ数値のため、両者は同じ使い方・運用することが可能です。日本国内において防災関係でUTMグリッドと言えば実はこのMGRSを指しています。(一社)UTMグリッド推進センターではこのMGRSもUTMグリッドリファレンスも共にUTMグリッドと呼んでいます。国土地理院地図(電子国土web)のUTMグリッドも表記を見る限りMGRSだと思いますので日本ではMGRSもUTMグリッドと呼んでいる。と理解して良いと思います。

スマホアプリにもMGRSアプリが世界中数多く提供されています。これを使うと現在位置が緯度経度/UTMグリッド/MGRS等それぞれの座標を簡単に知ることができるので「MGRS」で検索し、利用者の目的にあったアプリの利用をご検討いただくの良いと思います。(利用の際は各アプリの利用上の注意事項をよく読んでご利用ください)

 UTMグリッドはデジタル(GIS)とアナログ(紙地図)を効果的に併用できる技術で、非常時に人間が扱いやすいアナログ技術(紙地図・無線など)でも迅速かつ正確に位置情報を把握・伝達するための手段であり、特に土地勘の無い場所で多くの関係機関が活動する大規模災害・遭難対策関係者の共通言語(標準化)として利活用することで助かる命を最大化し、さらに復旧・復興スピードを加速できる仕組みといえます。

UTMグリッド地図の読み方・使い方


日本では東経132度(島根県、山口県付近)、138度(新潟県、長野県・静岡県付近)、144度(北海道東部付近)がゾーンの境目となりUTMグリッドが重なるエリアが生じます。このエリア付近の地図を作成する時には注意が必要ですが、正しい運用をすれば問題なく利用できます。UTMグリッドが重なるエリアでUTMグリッド地図の作成・運用でお困りの方はご相談ください。

参考情報